Overview: KTM X-BOW
2輪の巨人が放った「4輪スーパースポーツ」への挑戦
「Ready to Race」をスローガンに掲げ、モーターサイクル(2輪)の世界で圧倒的な頂点を極めていたオーストリアのKTM。そのKTMが、21世紀のスーパースポーツカーの在り方を世に問うべく、2008年に量産形態として発表した初の4輪スポーツカー、それが「KTM X-BOW(クロスボウ)」です。
ここで明確にしておくべきは、KTM内における組織構造です。世界的なモーターサイクル製造を展開する「KTM AG」に対し、4輪であるX-BOWの開発・製造・モータースポーツ活動は、完全子会社である「KTM Sportscar GmbH」、および先進技術のシンクタンクである「KTM Technologies」という、完全に独立した4輪専門部門によって統括されています。2輪の安易な延長線上ではなく、純粋な4輪レーシングコンストラクターとしての思想のもとで、X-BOWは誕生しました。
コンセプト:ロータスの思想を21世紀の技術で具現化する
X-BOWが目指したパッケージングは極めて明確でした。当時のKTMのCEOステファン・ピエラー氏は、その思想の根源を次のように語っています。
「私たちは、コーリン・チャップマンの考え、つまり、質実剛健で、必要最小限まで減らした軽量のスポーツカーという考えと、できる限り多くの技術革新を一緒にして、新しい世紀にそれを実現したかった」
ルーフもウインドスクリーンすらも削ぎ落とし(※初期モデルおよびR)、エアコンやインフォテインメントシステムといった快適装備を一切排除。すべてはドライバーが路面とダイレクトに繋がる「ドライビング・エクスペリエンス」の一点に集中するためです。
このチャップマンの「ライトウェイト思想」を21世紀の最新技術で具現化するため、KTMは世界一流のスペシャリストたちとの協働を選びました。
シャシー開発には、インディカーやF3で世界をリードするイタリアの「ダラーラ(Dallara)」、デザインにはKTMのすべての2輪をインダストリアルデザインの芸術へと昇華させてきた「キスカ(KISKA)」、そして心臓部には信頼性と圧倒的な効率を誇る「アウディ(Audi)」のパワーユニットを採用。
競技車両そのものの圧倒的なスタイリングとレーシングテクノロジーを誇りながら、無改造で公道を走行できるロードカーという、前代未聞のドライビングマシーンが完成したのです。
日本導入の歩みと新車取扱終了について
2015年の日本導入に際して、Witham Cars はKTM X-BOWの正規販売代理店としてスタートを切り、新車のデリバリーから、メンテナンスをはじめとするアフターサポートまで、日本のファンとX-BOWを繋ぐ架け橋として邁進してまいりました。
その後、メーカーであるKTM Sportscar GmbHは、欧州を中心とした「GT4」や「GT2」等のクローズド・レーシングステージへと主軸を大きく移すことになります。これに伴う世界的な製品戦略の変更や、各国の法規対応(ホモロゲーション)の移行が重なった結果、日本国内におけるロードカーの正規輸入・供給体制は事実上の終了を迎え、日本市場からは撤退する形となりました。
そのため、現在、弊社におきましてもKTM X-BOWの新車取扱いはすべて終了しており、今後を含めて新車の導入予定はございません。
しかし、2015年の導入以来、実車を通して弊社が蓄積してきたメカニカルノウハウや深い見識は今も色褪せることなくここにあります。新車供給が途絶え、いまや希少な「現代の伝説」となったX-BOWだからこそ、私たちはそのヘリテージを正しく守り、既存のオーナー様を支え続ける役割を果たしていきます。
Model Lineup Archive
KTM X-BOW(日本導入モデル)
2015年の正規導入開始から2018年頃にかけて日本市場を賑わせた「KTM X-BOW」は、純粋なレーシングスピリットを公道で味わうための金字塔として、仕様の異なる2つのコアモデルを展開しました。
快適性を一切排除し、1960年代のライトウェイト思想を現代の技術で過激に突き詰めたロードスターの「R」。そして、その圧倒的な運動性能をベースにウインドスクリーンをまとい、ヘルメットレスでのグランドツーリングを可能にした「GT」。日本のエンスージアストたちを熱狂させた、第1世代の双璧をなすラインアップです。
KTM X-BOW GT
X-BOW GT
フロントウインドシールド(熱線入りガラス風防)やサイドウインドウ、ワイパーシステムを標準装備し、ヘルメットレスでの公道走行を可能にしたGT(グランドツーリング)仕様。アウディ製2.0L TFSIエンジンは実用域の扱いやすさとトルクを重視した285ps仕様となり、ウインドスクリーン等の追加により車重は増したものの、実用性と圧倒的なパフォーマンスを両立しています。
| Engine | Audi 2.0L 直列4気筒 TFSI Turbo |
|---|---|
| Power | 285ps |
| Weight | 847kg |
KTM X-BOW R
X-BOW R
フロントスクリーンを持たず、わずかなエッジディフレクターのみで風を整流する、X-BOW伝統のスパルタンなピュア・ロードスター仕様。さらなる高回転・高出力化が図られた300psのアウディ製心臓部をリアに背負い、余分な快適装備を徹底排除したことで「GT」よりも約50kg軽い車重を達成。ソリッドかつ獰猛な加速とコーナリングを突き詰めた1台です
| Engine | Audi 2.0L 直列4気筒 TFSI Turbo |
|---|---|
| Power | 300ps |
| Weight | 790kg |
Features
異次元のレーシング・テクノロジー
KTM X-BOWは、競技車両そのものの圧倒的なスタイリングでありながら、無改造で公道走行を可能にした前代未聞のロードゴーイング・レーサーです。世界最高峰のスペシャリストたちとの協働が生み出した、その驚異的なテクノロジーの全貌を紐解きます。
卓越した安全性を誇るフルカーボンモノコック
KTM X-BOWは、複合カーボンファイバー素材から完全に製造されたモノコックを誇る、世界初の量産車です。かつては純粋なレーシングカーのみに利用されていた先駆的テクノロジーを惜しみなく投入しています。
ドイツの複合繊維専門メーカー「ベティエ(Wethje)」が、精密な手仕事とオートクレーブ(高圧窯)技術を駆使して製造するこの二重壁構造のカーボンモノコックは、重量わずか80kg。それでありながら、ねじり剛性は「35,000 Nm/rad」という驚異的な数値を叩き出します。
さらに車体先端部には、FIA-GTやフォーミュラ3の厳しい安全規定に準拠するカーボン-アルミニウム・サンドイッチ構造の「クラッシュボックス」を装備。転覆時にも車体重量の2.5倍の荷重に耐えるアルミニウム製ロールバーが組み込まれており、最高水準の安全性をドライバーに保障します。
フォーミュラカー直系のシャシー&空力特性
シャシー開発のパートナーは、世界最高峰のレーシングカーコンストラクターであるイタリアの「ダラーラ(Dallara)」。その独創的な空力デザインは、既存の量産車の常識を遥かに凌駕します。
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フラットアンダーボディ:
車体底部はフォーミュラカーさながらの3ピース構造を採用。フロント・スプリッターとリヤ・ディフューザーの相乗効果により、時速200km走行時に、ウインドスクリーンを備える「GT」でおよそ100kg、ピュアロードスターの「R」では約200kg(エアロパッケージ装着車では最大約400kg)に達する強烈なダウンフォースを発生します。
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驚異のコーナリング性能:
空力と高性能タイヤの組み合わせにより、横方向の加速度(コーナリングG)は最大2.0Gまで許容。これは公道走行を認められた量産車の中では桁違いの数値です。
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プッシュロッド・サスペンション:
フロント車軸には、フォーミュラカーから直系派生したWPサスペンション社製のプッシュロッド・シャシーを採用。高価で複雑な構造ゆえに量産車への採用は極めて稀ですが、比較にならない接地感と正確なハンドリングを実現しています。
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ブレンボ製ブレーキ:
フロントに305mmスロットディスク+4ピストン固定キャリパー、リヤに262mmディスク+2ピストン固定キャリパーを配し、100km/hからわずか32.9メートルで完全停止するストッピングパワーを確保しています。
効率的で高性能なアウディ製ターボエンジン
X-BOWのミッドシップには、信頼性の高いパワーパートナーであるアウディ製の2.0リットル直列4気筒TFSIエンジンを搭載しています。ガソリン直接噴射方式とターボチャージャー、高効率なインタークーラーを組み合わせたこの高性能ユニットは、それぞれのモデルに最適な異なるチューニングが施されています。
ピュアロードスターの「R」では最高出力300馬力を発揮し、グランドツーリング仕様の「GT」では実用域の扱いやすさを重視して3,200rpmという低回転で420Nmの最大トルク(最高出力285馬力)を発生します。
さらにこれらのパワーユニットやギアボックスは、取付位置を19mm下げる専用のアルミニウム製サブフレームを介してマウント。これにより車体の重心をさらに15mm低下させ、コーナリングスピードを極限まで引き上げています。駆動系にはドレクスラー製LSDが標準装備され、ショートシフト仕様の6速MTとともに、あらゆるコーナーで完璧なトラクションを路面に伝えます。
ランニングコストを抑える「組立車両構造(ブロックシステム)」
純粋にサーキットや過酷な走りで使用する際、X-BOWは極めて優れた合理性を発揮します。万が一、アクシデントに見舞われた場合でも、メインのカーボンモノコックが無傷である限り、ダメージを受けたパーツのみを部分的に交換する「ブロックシステム(組立構造)」を採用しています。
一般的な量産車のような板金作業やフレームの矯正作業を必要とせず、ボルトオンパーツ単位の交換により、素早く、かつ合理的なコストでの修復を可能にしています。