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ESPRITの歴史:

ESPRIT

開発の経緯:高級スーパースポーツカーブランドへの脱却

1970年代初頭、ロータスの創業者であるコーリン・チャップマンは、それまでの「軽量なキットカーメーカー」というイメージから脱却し、ポルシェやフェラーリと肩を並べる「高級・高性能なスーパースポーツカーメーカー」へのステップアップを画策していました。その壮大な野心の旗手として白羽の矢が立てられたのが、1972年のトリノ・ショーで公開されたイタルデザイン(ジョルジェット・ジウジアーロ)によるコンセプトカーでした。
ロータス伝統のバックボーンシャシーに自社製の4気筒マルチバルブエンジンをミッドシップマウントするという理想的なパッケージは、数々のリファインを経て1976年に「エスプリ(S1)」として正式にデビュー。ブランドの未来を背負う、新世代のフラッグシップがここに誕生しました。

開発のコンセプト:ライトウェイト思想を宿した、新世代のミッドシップ・グランドツアラー

エスプリの開発において掲げられた絶対的なテーマは、「ライトウェイト思想を宿した、新世代のミッドシップ・グランドツアラー」です。
当時の競合スーパーカーたちが大排気量のV8やV12エンジンを搭載し、重厚なパワーで勝負していたのに対し、ロータスは自社製の軽量な2.0L〜2.2L直列4気筒エンジンを選択。ロータスならではの極上のハンドリング特性と、ジウジアーロが描いた全高わずか1,111mmの極鋭のウェッジシェイプ(くさび型フォルム)を融合させることで、他とは一線を画すスリムで知的、かつ強烈な存在感を放つスポーツカーを目指しました。

市場での評価とモータースポーツでの足跡

1976年の発売直後から、その未来的なルックスは世界中に大きな衝撃を与え、映画『007』シリーズのボンドカーに大抜擢されたことで、その知名度は不動のものとなりました。当初はパワー不足や信頼性の課題が指摘されたものの、1980年のターボ化によって名実ともに超一流の動力性能を獲得しました。
その高いポテンシャルはサーキットでも遺憾なく発揮され、1990年代初頭には米国のIMSAレースで活躍。さらに1993年および1994年には、4気筒ターボを極限までチューンした「エスプリ・スポーツ300」のレース専用車でル・マン24時間レースへ参戦し、続くBPR GT選手権でもGT2クラスの主役としてポルシェなどの並み居る強豪と渡り合いました。
2004年に生産を終了するまで、実に28年間ものロングセラーを記録。ストリートとレースの双方でロータスを一流のプレミアムブランドへと押し上げた、不朽の功労車として今なお高く評価されています。

ESPRIT

Model Variations

ESPRIT モデル展開と特徴


前期型:ジウジアーロ・デザイン世代

(1976 - 1987)

1976年に幕を開けた初代エスプリをはじめとする前期シリーズは、天才デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた、極鋭の直線と平面で構成されるウェッジシェイプを最大の特徴とします。「折り紙細工」とも評されたそのアグレッシブな未来派フォルムは、従来の丸みを帯びたロータスのイメージを完全に覆し、世界に強烈なインパクトを与えました。

ロータス伝統の堅牢な鋼管バックボーンシャシー中央にエンジンをマウントするパッケージは、世代を追うごとに足回りのジオメトリー刷新やシャシーフレーム自体の再設計といった大幅な改良が重ねられ、独創的なルックスに見合う純粋なスポーツカーとしての資質と、プレミアム・ミッドシップとしての洗練を確固たるものにしていきました。

4気筒 NA(自然吸気)モデル

(1976 - 1987)

自社開発のオールアルミ製4気筒DOHCエンジンを搭載したNA(自然吸気)モデルは、エスプリの最もピュアで軽量な原点です。過度なパワーに頼ることなく、シャシーの軽さとミッドシップならではの卓越した回頭性を活かして、ロータス本来のシャープなハンドリングを追求したライトウェイト思想が色濃く残る系譜です。

Lotus Esprit S1
Lotus Esprit S2
主なグレード
Giugiaro NA / The Origin

ESPRIT S1 / S2

1976年に登場したエスプリの原点。2.0LのType 907エンジンを搭載し、驚異的な低全高と軽さによるピュアな走りを実現。のちのS2ではフロントスポイラーの追加や冷却性の改善、リアウインドウ周辺の視界向上など、初期の課題に対する着実なブラッシュアップが図られました。

EngineLotus Type 907 2.0L
Power160ps
Weight900kg - 980kg
Giugiaro NA / 2.2L Evolution

ESPRIT S3

1981年に登場したNAモデルの完成形。エンジンを2.2LのType 912へと拡大し、最高出力こそ据え置きながらも実用域のトルクと信頼性を大幅に向上。さらに、先行して開発されたターボモデル譲りの強固な新型シャシーや新設計サスペンションが与えられ、走りの質感が飛躍的に高まりました。

EngineLotus Type 912 2.2L
Power160ps
Weight1,010kg
4気筒 ターボ・モデル

(1980 - 1987)

エスプリに本格的なスーパーカーとしての超一流の動力性能を与えたのがターボシリーズです。パワーを受け止めるためにバックボーンシャシーを新設計し、サスペンション構造も一新。過激なターボパワーと熟成のシャシーの融合により、世界一級のパフォーマンスを獲得しました。

Lotus Turbo Esprit
Giugiaro Turbo / Evolution from Dry Sump to HC

TURBO ESPRIT / TURBO HC

F1カラーの限定車「エセックス」を祖とするジウジアーロ・ターボ。初期型はレーシングカー直系の2.2L Type 910「ドライサンプ」エンジン(210ps)を搭載し、圧倒的な低重心を誇りました。最終期には圧縮比を高めた「HC(ハイ・コンプレッション)」へと進化。扱いやすいウェットサンプへと最適化されつつ215psへと出力向上を果たし、実力を熟成させました。

EngineLotus Type 910 Turbo / Type 910 HC Turbo 2.2L
Power210ps - 215ps (HC)
Weight1,150kg

後期型:ニュー・エスプリ世代

(1987 - 2004)

1987年、エスプリはデザイナーのピーター・スティーブンス(のちにマクラーレンF1も担当)の手によってドラスティックな変貌を遂げました。ジウジアーロ時代の極鋭な直線基調から、空力特性を徹底的に追求した艶やかで流麗なラウンドフォルム(丸みを帯びた形状)へと生まれ変わり、世間では「ニュー・エスプリ」と呼ばれ親しまれました。

外観のモダナイズに留まらず、キャブから電子制御インジェクションへの移行、水冷インタークーラーの採用、さらにはパワーステアリングの標準装備化やシャシー剛性の強化など、メカニズムも時代に合わせて全方位に近代化。のちにデザイナーのジュリアン・トムソンがさらに洗練されたスタイリングへと磨き上げ、21世紀を迎えてもなお一線級の魅力を放ち続けるプレミアム・スーパーカーとしての地位を確立しました。

4気筒 インジェクション&ターボ・モデル

(1987 - 1999)

ニュー・エスプリの基盤を支えた4気筒シリーズは、電子制御インジェクションの導入や独自の吸気冷却システムによって、2.2Lという排気量の限界に挑み続けた時代です。ロータス伝統のライトウェイトなハンドリングを色濃く残しながら、日常的な扱いやすさと爆発的な加速力を両立させました。

Lotus Esprit Turbo
Lotus Esprit GT3
主なグレード
New Esprit / Injection & Chargecooler

ESPRIT TURBO / SE

新世代フォルムを纏った初期のニュー・エスプリ。1989年に登場した高性能版「SE」では、電子制御マルチポイント・インジェクションに加え、水冷式インタークーラー(チャージクーラー)を装備。最高出力は4気筒ながら264psに達し、当時の並み居る大排気量ライバルを凌駕する動力性能を獲得しました。

EngineLotus Type 910 Injection Turbo 2.2L
Power215ps - 264ps (SE)
Weight1,300kg - 1,320kg
New Esprit / 4-Cylinder Final Evolution

ESPRIT S4 / S4s / GT3

1993年以降に展開された4気筒ターボの最終完成型。外観はリアウイングの配置変更などモダンに洗練され、パワーステアリングの採用で操縦性も向上。「S4s」で300psに到達する一方、最後期に登場した「GT3」では2.0Lターボへとあえてダウンサイジングし、初期のエスプリを彷彿とさせる軽快な走りを復刻させました。

Engine Lotus Type 910 2.0L Turbo(GT3) / Type 910 2.2L
Power243ps - 300ps (S4s)
Weight1,240kg (GT3) - 1,340kg
V8 ツインターボ・モデル

(1996 - 2004)

長年連れ添った4気筒に別れを告げ、エスプリの最終章を飾ったのが悲願のV8シリーズです。ロータスが完全自社開発したコンパクトかつ高出力なV8エンジンを搭載し、名実ともに世界の頂点に立つピュア・スーパーカーへと登り詰めました。

Lotus Esprit V8
Lotus Esprit Sport350
主なグレード
V8 Twin-Turbo / The Ultimate Flagship

ESPRIT V8 / V8-GT

1996年、ついに念願の自社開発3.5L V8ツインターボ「Type 918」を搭載。オールアルミ製で極めてコンパクトに設計されたこの新世代ユニットは最高出力350psを発揮し、地響きのような加速力を実現。快適性を重視した標準仕様のほか、装備を簡素化して軽量化を突き詰めた熱狂的なファン向けの「V8-GT」もラインナップされました。

EngineLotus Type 918 V8 Twin-Turbo 3.5L
Power350ps
Weight1,320kg (GT) - 1,380kg
V8 Twin-Turbo / Track-Focused Limited

ESPRIT SPORT 350

1999年に世界限定50台前後で発売された、エスプリの歴史において最も過激なロードゴーイング・レーサー。マグネシウム製のMONOホイールや巨大なカーボン製リアウイング、APレーシング製ブレーキシステムを標準装備。徹底的な軽量化とシャシー強化により、サーキットでの圧倒的な戦闘力を研ぎ澄ました究極の一台です。

EngineLotus Type 918 V8 Twin-Turbo 3.5L
Power350ps
Weight1,300kg