ブランズハッチ6時間耐久レース参戦リポート

BRANDS HATCH LOTUS 6hour ENDURANCE RACE とは

1970年代後半から、イギリスのブランズハッチサーキットにおいて、ツーリングカーによって 長らく続いた「BRANDS HATCH 1000km ENDURANCE RACE 」。

その伝統ある耐久レースを再現させたともいえるのが、LOTUS CUP UKやELISE TROPHYなどの世界各国のLOTUS CUPオーガナイズで知られる、LOTUS ON TRACK RACING DRIVERS CLUBによって開催されている 「LOTUS 1000km ENDURANCE RACE 」。

 エントリーするチームは、LOTUS CUP UK、ITALY、EUROPA 、ELISE TOROPHY UKをはじめとする世界中のLOTUS CUP シリーズで戦うエントラントたち。

普段はスプリントレースでしのぎを削り、タイトル争いを行うドライバーやチームが中心となりこの耐久レースに挑戦してくる。 その雰囲気は各国の歴代チャンピオンや選手達が参戦する、まさにLOTUS CUP 世界統合戦の様相で、元F1ドライバー、マーチン・ドネリーや、 オートバイテル・Lotus Cup で名を覇せたマーク・フララヴ、Lotus Cup UK の最強ドライバー、サイモン・フィリップスなど、猛者が勢ぞろい。

まさにスプリントさながらのエキサイティングな耐久レースなのだ。

Team Witham Cars Japan

 昨年の第1回目の開催を聞きつけたのは2011年の6月。かねてよりLOTUS CUP UKへの参戦を計画していたことも有り、これはチャンスとばかりに、何とか参戦できないものだろうかと、英国の古い友人にオファーを投げてみた。

 というのも、LOTUS CUP UKをはじめとするLOTUS CUPシリーズは、年間を通してスプリントレースで開催されている。プライベーターが中心の選手達は耐久レースに参加するためのパートナーを探さなければならず、速い乗り手を探しているというのだ。

 とはいえ、普段はライバルとして戦っているチームや、因縁のライバルとチームを結成するのもそれなりに限界があり、また、いくら速いドライバーであっても、普段からLOTUS CUPで戦っていないドライバーでは通用しない事は、参戦している選手ならば周知の事実でもある。

 そんな中、海の向こうから届いた、2008年2009年とLOTUS CUP JAPANで連続チャンピオンを取り、特に2009年には全勝でシリーズを制覇したという自分のプロフィールは、彼らの目を引くのに十分なインパクトがあったようだ。

 そんなことから、ELISE TROPHY UKに参戦するADAM BEWSEYとDAN PLANTの二人に親友のメカニックを通じて出会い、TEAM WITHAM CARS JAPANを結成することになった。

 そして昨年の第1回LOTUS 1000km ENDURANCE RACEにPRODUCTION CAR CLASSにELISE MK1でエントリー、見事クラス優勝、総合3位を獲得したのである。

 今年、1000kmから6hourと、少し短縮されたLOTUS 6hour ENDURANCE RACEに昨年と全く同じオーダーでチームを結成。Production Class2連覇と総合優勝へ向けて再挑戦した。

フリープラクティス開始

 金曜日のフリー・プラクティスへ向けて、本当ならば早めに現地入りし、時差に体調を慣らしたりしたいところではあるが、ジェントルマン・ドライバーの自分にはそんな余裕も無く前日にUK入り。 若干の時差を感じながらも1回目のフリー・プラクティス。

 ありがたいことに、チームメイトが、コースに慣れていない自分に多くの走行時間を与えてくれた。 とはいえ、昨年、約80Lのガソリンタンクに換装されたELISE MK1で1スティント/1時間40分のロングディスタンスを経験しており、コースの内容は既に頭に入っている。サスペンション、エンジンなどをブラッシュアップした今年のマシンの細かな変更点などをチェックしながらの走行は、チームディレクターの指示を確認し、燃費やサスペンションの状態をチェックしながら行う。実はコレが意外に楽しく、「OK, Next is full !」 と言ってもらうまでの緊張感がたまらなく楽しい。

 タイヤはLOTUS CUP UKと同様にヨコハマタイヤA048のワンメイク。Mコンパウンドだが、日本のサーキットと違い路面ミューの低いイギリスのコースとの相性は、普段 LOTUS CUP JAPAN で使用しているA048LTSコンパウンドやAD08ネオバで走っているフィーリングのようだ。

 そうこうしているうちに陽が暮れて2回目のフリープラクティス、ブランズ・ハッチのナイト・セッションが始まる。ここからが毎年ドラマチックだ。  昨年は、金曜日の夜に予選が行われ、1000kmENDURANCE RACE名物の「Qualify in the Dark 」だったが、今年は明日の早朝に予選が開催される。それでも明日の決勝ゴール時間は、秋のイギリスらしく早々にナイトランになる。2回目のフリープラクティスもそれに備えてかナイト・セッション。各ドライバーと交代しながらチーム・ウィザムカーズ・ジャパンは全てのドライバーが規定周回数をクリア。マシンの仕上がり、各ドライバーのタイムギャップもまずまずの内容であった。  それにしても、今年は各チームともヘッドライトチューニングが凄い。我々もドライビングランプを含めてHidを4灯にして挑むのだが、漆黒の闇の中のブランズハッチは、まさに浮遊しているかの様なフィーリング。独特の緊張感の中で海外でレースをする醍醐味を多いに味わう。

 昼間のセッションでは3人とも殆ど変わらないラップタイムであったが、この闇の中、昼間と殆ど変わらないタイムで走るパートナー達に、ナイトセッションでは全く歯が立たない。 もちろん、決勝では自分にナイトランのオーダーは組まれていないので、あまり真剣に取り組むことも無くナイトランのフリープラクティスを終えたのだが、これが後にしっぺ返しを喰らう事になるとはこのときは知る由も無かった。 とにもかくにも、フリープラクティスは無事に終了。 夜、総合ブリーフィングを終えて、明日の決勝へ向けてマシンを万全の準備に整え、この日は終了。明日が楽しみで眠れそうも無い。

雨、雨、雨の予選

 日付が変わり、早朝からの強い雨は、予選が始まる頃には少しづつ弱くなっていた。  自分も含めてドライバー全員が「雨好きなんだよねー」という、カラ元気の様なアグレッシブな事を言っているが、日本のサーキットと違い、路面ミューの低さはウェットになってくると正直に言ってかなり怖い。

 ビビッている間も無くチーム監督からのオーダーは、1時間の予選を各自15分づつ走り、最後の15分は、その時にアタッカーを決めるとの事。レインタイヤも無くA048ワンメイクのレースはこの辺りも面白い所だ。 「まあ、レースは長丁場の6時間だし、予選なんて関係ないさ」 などと嘯きながらもドライバー全員が、「アタッカー」という言葉に反応してる様子。

 いよいよ予選開始。ADAM、DANと予定通り予選走行し、3人目にいよいよ自分のアタック。 外人( ココでは私の事だ ) がマシンを壊してはマズいので、万全の姿勢で攻めながらも、それでもベストラップを刻み15分を前に早々にINのサインが出た。 BOXでドライバー交代かと思いきや、マシンはそのままガレージへ。 拍手の中、そのままアタック終了。すなわち予選終了だ。

 雨の中、かなりのマシンがコースアウトをしていたのだが、最初からアタックなどするつもりは無かったのか、なんだか監督に上手くコントロールされたみたいだった。 終わってみれば予選結果は総合19番手、ELISE TROPHYクラス8位であった。

雨、雨、雨の予選

 昨年より確実に厳しいポジション。ディフェンディング・チャンピオンとして乗り込んでいるのだが、なかなか上手くは行きそうにない。各チーム共にかなりのレベルアップと仕上がりを見せているようだ。予選終了後、セットアップの打ち合わせ。少しづつ天候は回復してきているのだが、そこはブリティッシュ・ウェザー。雨こそか止んできているが、路面が乾くのは相当先になるだろう。セッティングは悩ましいところである。

 そこで、ミーティング後に、驚いた事にスタートドライバーに任命された。 イギリス人のローリングスタートはハンパではない。1周丸々3ワイドなんて話も耳にするが、しかもこの雨である…。一瞬、断ろうかとも思ったがLOTUS ENDURANCE RACE で未経験のスタートドライバーを出来るなんて、心の中でガッツポーズをしていた。 この時とばかりに、レインでのセッティング変更点を進言したが、この先の天候を読むのは日本人には無理。まさに、ブリティッシュ・ウェザーなのだ。そうして超ビビりながら決勝を迎える。

LOTUS 6h ENDURANCE RACE がいよいよスタート! 『デスマッチレース:決勝』はこちら