イングランド西部、風光明媚なウスターシャーのマルヴァーン丘陵の麓に、英国の自動車メーカーであるMORGANの本社工場は位置しています。1909年の創業、或いはそれ以前より、この地でスポーツカーを製造し続けてきたMORGANは、一世紀以上経った現在も、その伝統と革新を紡ぎ続けています。
ロンドン・ヒースロー空港から車で西へおよそ2時間。のどかな風景が広がるピッカースレイロードを走ると、やがて視界に現れるのは、趣のあるレンガ造りの建物群です。これこそが、MORGANの魂が宿る本社ファクトリー。
長い歴史を刻んできたMORGAN社ですが、その制作現場では、1909年にHFSモーガンが打ち出した基本理念を今も守り続けています。すべてのMORGANスポーツカーは、ハンドクラフトであること、軽量であること、そして何よりも運転する喜びを追求すること。この普遍的な哲学が、今もなお、クルマづくりに息づいています。
かつてのMORGANを象徴する3Wheelerや4/4といったクラシックモデルは、2019年末までに生産を終了しましたが、これらのモデルのシャーシは、剛性・耐久性を必要とする主要部分を除き、フレームに木材が使われていたことで知られています。この木材へのこだわりは、新しい時代へと続くMORGANのDNAとして、今も受け継がれています。
ファクトリーの内部は、建物やフロアごとに細かくセクション分けされ、主にアッシュ材、アルミ、革の3つの素材を用いて、一台一台丹念に、まるで芸術品のように手作業で制作、組み立て、調整されています。
その最高水準の品質は、伝統、革新、最先端技術を ひとつにするための技術を磨き続ける、ひたむきな熟練職人のなせる業です。
特に目を引くのは、木製パーツ部門です。ここでは、熟練の職人たちが木材を一つ一つ丁寧に加工し、サンドペーパーで削り、何度も「ちり合わせ」と呼ばれる微調整を繰り返します。その光景は、まさに伝統工芸品が生まれる瞬間を見ているかのようです。長年の歴史を物語るかのような年季の入った巨大なツールが、フェンダー用の木製パネルを丹念に形作っていく様子は圧巻の一言。
内装についても、すべてが手作業で仕上げられ、職人たちの精緻な技が光ります。
MORGANのクルマは、単なる乗り物ではなく、職人の情熱と魂が込められた工芸品と言えるでしょう。
モーガンファンの皆様がモーガンの車から感じる温もりは、ウースターシャー州マルヴァーンの美しい温泉地にある工場の家庭的な雰囲気そのものです。
モーガンのモデルレンジは21世紀を迎えて進化し、 現在は年間700~800台のみを生産しています。
2019年に発表された「プラス・シックス」より、新設計の「CXジェネレーション接着アルミニウムプラットフォーム」が採用されました。これはモーガン社内にてデザイン開発され、この先何十年にも渡って開発されるモーガン車に使用できるように導入されました。
「CXジェネレーション接着アルミニウムプラットフォーム」は、プラス8 や エアロ8にて使用された前世代のアルミニウムプラットフォームより、ねじれ剛性が100%アップしていながら、重量増もありません。モーガンの象徴でもある伝統のトネリコ木材も新アルミメインフレームの上にサブフレームとして搭載しており、伝統と最新技術が融合された造りとなっています。モーガンの技術力が結集した、新時代を支えるプラットフォームです。
MORGAN・モーター・カンパニーでは、一般の方々にもそのクルマづくりの真髄に触れていただくため、工場見学ツアーを定期的に開催しています。このツアーに参加すれば、クルマが生まれるまでの全工程を余すことなくご覧いただけます。この工場見学には、毎週200名近くの方が訪れるそうで、大変人気の工場であることが伺えます。また、遠方にお住まいの方や、より手軽にMORGANの世界を体験したい方のために、ドローンを用いた工場内のバーチャルツアーも公開しています。
MORGANは、単にクルマを製造するだけでなく、その歴史、哲学、そして職人たちの情熱を多くの人々と分かち合うための工夫を凝らしています。英国を訪れた際には、ぜひ一度、MORGANが紡ぎ出すクラフトマンシップの世界を体感してみてはいかがでしょうか。