デスマッチレース:決勝
見ているだけでワクワクするような、ジネッタやホットハッチ達を中心としたバトルロイヤル! みたいなサポートレースを挟んで、LOTUS 6h ENDURANCE RACE がいよいよスタート!
フロントローはLOTUS CUP EUで大変有名なLOTUS EUROPA-S とLotus Cup UK の常勝ドライバー。このEUROPA-S は昨年もポールポジションだった。とにかく速くて、ドライバーもかなりの手練れだ。
チーム・ウィザムカーズ・ジャパンも準備万端でコースイン。緊張の中にも、過去に経験の無いほどのアドレナリンが噴出されている。予定では1スティントをレギュレーションMAX2時間ぎりぎりまで走るという超ロングスティント! マシンにセットされたドリンクはエナジーじゃなくて水でした…。
ほぼ止みつつある雨の中、フォーメーションラップを行い、そしてついにスタートを迎える。 首都高の渋滞、というよりラッシュアワーの改札口の様相で1コーナーに進入していく。
3コーナーまでコース幅目一杯に並んで進入。少しぐらい引いたらいいのに・・・とか思いながらもこちらも譲れない。3ワイドなんて話では無く、まさに団子状態。左からコツコツ当たってる! それでも、閉めたり押したりは無く、超ウルトラ接近戦は最高に楽しい。 3コーナーから先は隊列も整いバトル開始。「タイヤが温まってないっ!」なんて言ってる輩は置いていかれるのみだ!
決勝前、パドックを歩いていると「ハーイ、ユリ!」選手達が声を掛けてくれる。昨年以来の顔なじみも多く、嬉しいひと時なのだが、「名前、ユージだよ」といちいち面倒。何の事かと思えば、LOTUS CUP UK のパンフレットに昨年のレースが紹介されていて、「Yuri Shinohara From Japan!」と書かれていた。これ、タイプミスではなくて、イギリスでは何故かYURI と書かれる事が多い…。
顔なじみの中でレースが出来るのも、LOTUS CUPの大好きな所である。バトル中にも目が合えばお互いニヤッとしている?のかもしれない。レースは序盤からまたも雨で、流石にどのチームも速いドライバーばかりがスタートを担っている様でなかなかポジションを上げられない。スプリントさながらのバトルでようやく1台抜くのに何周も戦わねば前には出れない。本当にタフなレースである。それでもスタートから1時間も過ぎるとコースアウトする車両が続出。46周目には1度目のSCが導入され一息つくことが出来た。
ブランズ・ハッチの1コーナーは完全なブラインドコーナーのうえに激しい下り坂で、ELISEでは5速からフルブレーキングで進入していく。3速まで落とし、胃がジャンプする浮遊感を味わいながら逆バンク気味のクリッピングポイントの手前ですぐさまアクセルONする。このトラクションが抜け浮遊しているジャンプ中にアクセルを開けられているか否かがタイムに大きく影響する。
ただ、この1コーナーが本当に手ごわい。ほんの少しブレーキが遅れたり、クリップまでのコントロールを乱してしまうとアクセルが開けられない。すなわち非常に不安定な状態でジャンプしてしまい、コースアウトに繋がってしまう。1コーナーでコースアウトしてしまうと自力で脱出するのは不可能な深いサンドグラベルが待っているのである。
走行スティントの中で何度もSCがコースに出る波乱の展開のなか、1h30分を過ぎると各チーム、ドライバー交代が始まりピットレーンが賑やかになっている。 集中力を高め、この時とばかりにこちらはまだ走る。稼げるだけ稼ぎ、レギュレーション最大の2時間、正確には1h56分でBOXが出た。そうして無事に2ndドライバーのDANに交替、この時点でエリーゼトロフィークラス4位、総合10位までポジション・アップした。
DANはジェントルマン・ドライバーながら非常にアグレッシブ。一見すると派手な走りに見えるのだが安定して速い。2輪では、英国のエンデューロ選手権で5本指にも入るオフロードライダーでもある。DANも各所でバトルを楽しんでいるかのように見える。少しづつ順位を上げ、1時間35分のステイントを消化し、3人目のADAMに交替、この時点でエリーゼトロフィークラス3位、総合9位につけた。
ADAMはこのマシンのオーナーでもあり、ELISE TROPHYでの優勝経験もあるドライバーだ。特にブランズハッチは得意としており、2番目のラップレコードを持っている。この頃コースコンディションはほぼドライになっており、ADAMが快調に前との差を詰めていく。うまくいけば・・という期待感にピット内もいい雰囲気が流れてきた。
ところがADAM走行中にマシントラブルの知らせが入る。どうやら緊急ピットインをすることになった。原因はオルタネーターのようで、対処すれば何とかレースには復帰出来るのだが、ここまでADAMの走行時間が35分。ゴールまでの残り1時間40分。チェッカーフラッグまでドライバー交代無く走りきるには自分が行くしかない状況になってしまった・・。
自分はといえば、スタートから2時間近いロングスティントを終え、この後の予定に自分の出番は無く、おなかも空いたのでランチなどをほおばりピットでくつろいでいた。その様な矢先、監督からの「ユージ、スタンバイ!!」の声がピットに響いた。
本来ならば SHINOHARA > DAN > ADAM > DANというオーダーでチェッカーを目指すはずであった。しかしADAMがドライブ中にまさかのマシントラブル、この時点でチェッカーまで残り1h50分。ピットインの後に給油、そのままチェッカーを目指すには、既に40分ドライブしているADAMでは連続ドライブ2時間というレギュレーションを越えてしまう。各ドライバーのドライビング・インターバル1時間というレギュレーションもあり、DANからADAMに交替してまだ40分、すなわちDANはまだ行けない・・。このままゴールするには自分が出るしか無かったのである。
緊急ピットインの後、殆どロスタイムもピットアウト。そして残りの1時間40分。ついに未体験のブランズハッチ・ナイトランに突入してしまった。もっと真面目にフリープラクティスでナイトランを走っておけばよかったのだが、時すでに遅し。
不慣れな中で、明らかにライバル達より遅く、ピットもあえてサインは出してこないので正確な順位は分からなかったが、何台かに抜かれかなりポジションを落としている。
それでも無理は出来ない。雨もあがり、ライン上はドライコンディションになっているのでここで無理をしタイヤを消耗すればこの後の追い上げもままならない。ここで無理をするよりも+2秒で終始、タイヤを温存しながら頭と目を闇に慣らす事に集中し我慢のドライブ。暗闇の中にドライビングのマーカーを探り出す。
ここまでレースは5時間近く経過。ベストラインを外れたコースコンディションは劣悪で、抜いていくマシンが小石を跳ね上げ、フロントガラスをビシビシと割っていくが我慢のしどころであった。
そして走り始めて20分を経過する頃には上位のマシンとほぼ同じタイムに。残り1h20分のところで、そこからは追い上げを開始した。サインガード脇を通過し、フル・プッシュを知らせると、次の周ポジション7位と掲示された。そこからはあっという間の時間が過ぎていく。暗闇の中、他のチームにもトラブルが出ているのであろうが、残り30分の時点で4位までポジションを上げる事に成功した。
ただひたすらに3位のマシンとの距離を詰める。 もう本当に何もかもがギリギリの状態。燃料も気になるのでアクセルワークにも気を使う。とにかくフルプッシュの30分は最高に楽しかった。
残り15分ほどだろうか、上位のマシンがコースアウト。そして、ついにチェッカーフラッグ!何とか走りきり、総合7位、PRODUCTION CLASS3位でフィニッシュ!
感極まる瞬間。終わってみれば、スタートとチェッカーを両方を経験させてもらったのである。
第1スティントと第4スティント、合計3時間44分のドライビング。ゴール直後は右足がつってしまい、満足に立つこともできないほどだった。
そんな自分をチームメイト2人が抱えて肩に乗せてくれて、本当に感激した・・。
連覇こそ逃したが、それでも2年連続の表彰台はまさに快挙!サーキットのアナウンスにも、 「WITHAM CARS JAPAN!!」「LOTUS CUP JAPAN!! 」の声が響いていた。
1年振りのブランズハッチのポディウムは最高の景色で、ライバル達からシャンパンの手痛い祝福も最高に嬉しいものだった。 リザルトだけ見れば、昨年からは順位を落としてしまいましたが、各チーム共に体制を大きく整え、本当に手ごわいという状況の中、トラブルを克服しポディウムを獲得できたことは、チームスタッフをはじめメカニックやパートナー達の、まさにチームの勝利です。
もちろん来年は再び表彰台の真ん中をねらいます!
また、応援やメッセージ、本当にありがとうございました。