
2022.08.16
「K4-GP」10時間耐久レース 参戦レポート
in 富士スピードウェイ
K4-GP 10時間耐久レースに初挑戦!
K4-GP夏の10時間耐久レースに参戦致しました。2020年冬の7時間耐久レースに出場以来、CATERHAM SEVEN 160も走行機会を得られずガレージで眠る事2年半、ようやく2022夏に復活です!
車両の製作を行うのは、主任メカニックの樋口と勝俣メカニック。2年半眠っていたSEVEN160は慎重にマシンチェックを行いメンテナンスしていきます。SEVEN160 K4GP仕様はエンジンやECUは市販車のまま手を入れず、サスペンション、LSD、ロールケージなどを換装したぐらいでその他は限りなくオリジナルに近い仕様になります。
8月2日(火)
一通りのメンテナンスが完了したところで早速日程を組み、シェイクダウンテストを行いました。
ドライバーは篠原。SEVEN160での久々のサーキット走行となりますので、マシンの挙動に異常が無いかを入念に確認します。テスト開始後、順調にラップを重ね、異常は見られず30分の走行を終えました。篠原は久しぶりのSEVEN160に「楽しい~」を連呼。グリップレベルの低いタイヤを装着した160はステアリング舵角を極力減らし、リヤステアを積極的に使って走らせていきます。当然スキルが必要となりますがドライビングを楽しめ、尚且つ効率良く燃費とタイムを詰めることが出来ます。
走行を終えたSEVEN160から燃料を抜き取り燃費を正確に計測。エンジン回転数を何種類か設定し燃費を計測していきました。テスト中、SUPER GT で muta Racing INGINGを駆って活躍する加藤 寛規選手が我々のピットにひょっこり遊びに来てくれました!早速SEVEN160に乗ってもらって1枚!
練習に参加頂いた高橋選手、クラブウィザムレーシングではお馴染みですね。LOTUS CUP JAPANにも参戦しており、今回の10時間耐久でもドライバーとして参加です。いつものELISE240FEとは、エンジンレイアウト、パワー、タイヤグリップなど、全く性格が違うCATERHAMの為、SEVEN160ならではのテクニックを篠原がレクチャーしていきます。さすがLOTUS CUPに参戦する高橋選手、30分の走行枠を問題なくラップを重ね初走行を終えました。開口一番「難しい~!」と。軽量な車体で燃費を考慮しながらも、タイムを詰めていく走り方に少し悩んでおりました。それでも満面の笑みを見せてくれました。
無事にテストを終え、Factoryに戻ってから車両のメンテナンスを行うと同時に、エンジンの熱ダレと燃費に少しでもプラスになればとクーリング対策を施すことにしました。改良点はインタークーラーの冷却。通常はノーズコーン先端からのみ空気を取り込んでいきますが、ノーズコーンにインテークとアウトレットを設け、内部にバッフルプレートを設置。インタークーラーにフレッシュエアを取り込むことで、効率的な冷却を狙います。
夏の10時間耐久レースは参加台数が105台と非常に人気があります。マシンの仕様によりクラス分けされ使用可能燃料も決められ、160はGP3-Fクラス、コペンやS660、スマート、アルトターボなど現在の軽自動車規格に沿った過給機付きの車両クラスとなります。使用可能燃料は90liter。決められた燃料でいかに効率良く走り、燃費を稼ぐかが勝敗を大きく左右するポイントとなります。
車両のメンテナンスも佳境に入り、いよいよドライバーネームとゼッケン#160、クラスステッカーの貼付けを行います。この車両はK4-GPマシンではありますが車検を通り公道走行が可能なSEVEN160。改めて稀有な存在だなぁと思いました。今更ですが・・・。
レースに挑むドライバーはケーターハムジャパンのジャスティン選手とモータージャーナリストの河口まなぶさん、LOTUS CUP JAPANにも参戦する高橋さん、そして弊社代表篠原の4名。残すところ2週間を切り、Factoryに集合して頂きました。ドライバー&ピットクルーが集まりいよいよ10時間耐久レースに向け士気が高まってまいります。

本番さながらにレーシングスーツ、ヘルメットなどを装着してもらい準備を進めました。
ピットスタッフもハイドレーションの交換、無線機の脱着、レーシングハーネスの締付けなど、各パートの作業効率アップ・タイム短縮を狙って繰り返し行います。何度か練習を行い、ドライバー交代に掛かる時間はおおよそ25秒、ある程度の手応えを感じて練習を終えました。河口さんには2020年冬の耐久に参加した際の車載映像で、SEVEN160の特性を確認頂きました。これで一通りの準備は完了です。
8月15日(月)
いよいよ富士スピードウェイに入り、決勝前日の練習走行に入ります。
河口選手は数々のレースなどで経験豊富な事はもちろんですが燃費走行のコツも熟知しており、早々に安定したタイムで走行を続け、SEVEN160に慣れて頂きました。
ドライバーチェンジのリハーサルも行われました。各自の役割を身体に覚え込ませることで本番でのミスを防ぎ、タイムロスを限りなく減らすためです。マシンは 前日も夜遅くまで整備を行い、万全を期してレースへ向かいます。
8月16日(火)
スタート前
当日の天気予報は曇り、降水確率は高めで気温はあまり上がらない見込みです。ドライバーへの身体的な負担が心配でしたが、真夏のレースには絶好のレース日和と言える気候です。チームクルーはゲートオープンと同時に富士スピードウェイ入りしてレースに備えます。ドライバーが身体を休められるようにテントを設営しスポットクーラーを設置。冷たいドリンクや食事を整え、サポート体制に抜かりありません。長丁場のレースではサポートが重要です。
万端の状態にマシンは仕上がっていますが、万が一の見落としもないよう最終チェックに余念がありません。
スタートドライバーを務めるジャスティンがマシンへと乗り込みます。AM 6:10コースイン。スタート前には仮装コンテストも行われました。
クラブウィザムレーシングではおなじみの武田康広さん。自身もエリーゼやMINIを所有する生粋の英国車乗りで、111CUPにも参戦しておりました。今回はストラテジーディレクターとして活躍して頂き責任重大です。レース直前にも武田氏を中心とし最終確認を行いました。
夏のK4-GPのスタートは、各チームより仮装したスタッフがスタートの合図と共にストレートを横断しマシンに貼られたシールを剥がしてスタートとなる、いわゆる変則ル・マン式スタートとなります。いよいよ10時間耐久レーススタート!
3周のセーフティカーランの後、各車両全開走行に入ります!!
1st Stint : Justin Gardnar
- Caterham Cars Japan -
ファーストドライバーはSEVEN160の生みの親、Justin Gardner氏!2016・2017・2020年の冬のK4GPを共に戦いました。
輸入元SCIのスタッフとしてSEVENオーナーにはとても親しまれてますね。流暢な日本語とSEVENを自在に操るドライビングテクニックを武器に、CATERHAMに興味がある潜在的なファンを虜にしていきます。
SEVEN160での耐久レースの経験も豊富なJustinはスタート早々から順位を上げていきます。総合22位/クラス5位からスタートし、5周目で総合15位/クラス3位までポジションアップ!そのまま順調にラップを重ね35周目には総合9位/クラストップに!その後も安定したラップで走行を続けて、約50周前後でドライバー交代&給油を行う予定となっております。
K4-GPでは富士スピードウェイピット裏にある常設のGASスタンドで給油を行う為、1度に2台迄しか給油が行えません。スタンドに入るタイミングによっては2~3台、多い時で5台程が給油を待つ事となり、タイムロスに繋がります。可能な限り給油待ちを減らすべく、スタッフがスタンドの混み具合をピットとドライバーにリアルタイムで伝えていきます。スムーズに給油出来るタイミングを見計らい、ピット&ドライバーに無線で指示を出します。絶好のタイミングでJustinピットイン!ドライバー交代の前に給油を行う為GASスタンドへ!しかしJustinが給油所へのルートを間違えてしまい、ピットロードをドライブスルーという結果になってしまいタイムロスしてしまいました。
幾度も走っているK4GPですが、今回から給油所への入口が変更されたことが原因のようです。そのまま、コースに戻り次周に再度ピットインし、最初の給油とドライバ―交代を行います。
2nd Stint : 高橋 基夫
- Club Witham Racing -
セカンドドライバーは高橋基夫選手。SEVENでは初レースですが、今回は実際の練習走行に加え、ドライビングシミュレーターでも富士スピードウェイを走り込んで来たそうです。初めてのK4-GPでも熱い走りが期待できます!
ジャスティンとのドライバーチェンジも初めてとは思えない程、スムーズに終えコースイン。安定したラップを刻んでいきます。100台を超えるマシンがひしめくコース上で、安定したペースで周回を重ねることは想像以上に困難です。
コース上のあらゆるところでトラフィックが発生してる所を出来るだけスムーズに交わして行かなければ、安定したラップタイムは刻めません。
その後、高橋選手の順調な追い上げにより総合16位/クラス1位に復帰致しました。31周を走行し河口選手へドライバーチェンジです。
3rd Stint : 河口 まなぶ
- Automobile Journalist -
サードドライバーは河口まなぶ選手。自動車ジャーナリスト&YouTuberとして、クルマ好きなら知らない人はいないのではないでしょうか。ご自身も若い頃からCATERHAMに興味をお持ちだったとのことで、今回の耐久レースも楽しみにして頂いていたかと思います。
走行を終えた高橋選手はかなり疲労も見られました。それでもSEVEN160での初レースを無事に終えた安堵感と、余程楽しかったのか興奮しながらレース状況をスタッフに話してくれました。
ドライバー交代の際に総合29位/クラス2位に後退してしまいましたが、初のSEVEN160でのレースとは思えない、終始安定した走行を見せてくれた河口選手。総合順位も18位まで上げる快走を見せてくれました。ピットとの交信も的確に情報を伝えて頂き、ピットスタッフも安心して燃費計算や給油のタイミングを計ることが出来ました。
走行を終えスタンドへ向かう160。
4th Stint : 篠原 祐二
- Club Witham Racing -
フォースドライバーは百戦錬磨の篠原です。
ピットアウト時点で総合22位に順位を落としましたが、前走車を次々交わしていき総合12位までポジションアップ!
走行を終えた河口選手からは「160はなかなか難しいです…」と感想を頂きましたが、でもCATERHAMは楽しいです!!とも。ジャスティンとの会話も弾んでおりました。
この頃から雲が厚く暗くなってきました。
5th Stint : Justin Gardnar
- Caterham Cars Japan -
今回のレースで2回目のスティントをスタートしたジャスティン。
走り終えた篠原。疲れてる様子も見られず、ひたすら楽しんで走っていたようです。
クラス2位をキープしたまま走行を続けておりますが、どうにもクラストップに追いつくことが出来ません。21周を走行し総合順位を11位まで上げ、再度篠原へ交代となります。16時前から雨がパラつき始めました。
Final Stint : 篠原祐二
- Club Witham Racing -
ドライバー交代に要する時間は全チームのピット作業で1位か2位かな??
この時点でポジションは総合13位・クラス2位。ここから篠原の猛烈な追い上げが始まります。
ジャスティンが前のスティントでイエローフラッグが振られる中、危険回避の為に前の車を抜いてしまい、長い審議の結果ドライブスルーペナルティが課せられました。篠原が追い上げを見せていましたが、篠原の走行時にペナルティはしっかり受けて、再度追い上げ開始です。

しかしトップのマシンがドライバー交代の為、ピットイン!差を詰めることが出来ました!まだチャンスはあるか!?
一進一退の攻防が続く中、トップのマシンが再びピットイン!マシンを止めてすぐ動き出す気配がありません。燃料がキツいのか!?この間に篠原がついにトップを奪取!。こちらは綿密な燃費計算をしておりますので、ペースを落とすことなくゴールまで走り切ることが出来ますので、このまま行けばクラストップは確定です!ここからは総合順位を上げるべく、篠原の走りにも熱を帯びます。ゴール時間が迫る頃にはホームストレートを走るマシン達も明らかにスピードが落ちてきました。
残り40分くらいになると、スローダウンする車が続出。完全にガス欠でコース上で止まってしまう車も現れます。SEVEN160の残燃料は16時まで何とか持つ計算です。
212周目、あと30分ほどでチェッカーが振られるというタイミングで前を走っていた1台がピットイン!総合6位まで上がってきました!それでも猛追を緩めず、最後の周でさらに1台を抜いて総合5位をキープしてフィニッシュ!!
ギリギリの状況で今まで蓄積してきた燃費データが功を奏し、チェッカーフラッグまでペースを落とすことなく攻め切ることが出来ました!高橋選手も喜びを爆発させてガッツポーズ!!
ピットに戻って来たSEVEN160。篠原をスタッフ一同抱き合いながら健闘を讃えていきます! 篠原と樋口メカニックも抱き合いながら労をねぎらいます!
ドライバー4人は腕を組みそれぞれの健闘を讃え、叫び、吠えてました・・・。
ドライバー達は満面の笑みで表彰台へ!高橋選手トロフィーを一際高く掲げサムアップ!富士スピードウェイの表彰台からの眺めはどんな感じでしょうか??
樋口チーフメカもトロフィーを持って、クラス優勝を遂げた満足感に浸っておりました。ドライバー達にも信頼されメカニック冥利に尽きます。
Finish!
レースも終わりエントラント達が帰路に着くころ、興奮が治まらないクラブウィザムレーシングはスタッフ一同SEVEN160を囲って1枚。2022年最高の夏を終えることが出来ました。
当日はサーキットまで応援に駆け付けてくれた方、励ましのメールをお送りくださったり、皆様の支えがあり10時間耐久レースを楽しめて、クラス優勝、総合5位の好成績を収める事が出来ました。 また次回、CATERHAM SEVEN 160でのレース活動を楽しみにして頂けたら幸いです。 ありがとうございました。