Maintenance Record



CATERHAM SEVEN 1600 BDR
メンテナンス

クラシック世代では最もカリスマ性の強いエンジンを搭載したSEVEN BDR。販売にあたり、車両本来のパフォーマンスを味わっていただくために、メンテナンスおよびリフレッシュ作業を行いました。

エンジンの点検・整備

まずは車体から降ろしたエンジンの点検・整備を進めます。今回実施したメニューは以下の通り。

  1. タイミングベルト交換
  2. ウォーターポンプ・ガスケット交換
  3. 各プーリー及びベアリング点検
  4. 各部ガスケット・オイルシール点検
  5. オルタネーターベルト交換
  6. オイルポンプ脱着点検
  7. クラッチ周り分解点検

タイミングベルトを取り外して各プーリーおよびベアリングの点検。プーリーに異常な摩耗や損傷は見受けられず、回転もガタつきなくスムーズ。ベアリングも問題ないようです。

古いウォーターポンプも異音や水漏れはなさそうですが、新品に交換します。

こちらは新品のウォーターポンプ。もちろんオルタネーターベルトも新品にします。

新品のオイルポンプのフランジにはプーリーの位置決めのリップがなかったため、旋盤で削り出しました。

タイミングベルト交換。テンション調整。

クラッチ周りの分解・点検。クラッチカバー・フリクションプレート・クラッチレリーズベアリングは状態が良く、異常は見られませんでした。

センターを出して慎重に組付けて完了です。

足回りの整備

続いて足回りを完全にバラして点検・整備を進めていきます。作業メニューは下記の通り。

  1. フロント足回り分解・点検
  2. ステアリングラック点検
  3. フロントハブ インナー・アウターベアリング交換
  4. トラニオン ラバーシール・スリーブ・ブッシュ・ワッシャー交換
  5. サスペンションアーム 塗装
  6. フロントフェンダーステー 塗装
  7. サスペンションアームアッパー ブッシュ交換
  8. サスペンションアームロア ブッシュ交換
  9. スタビライザー ブッシュ交換

ブッシュなどの消耗品が長いこと交換されていない様子ですね。

サスペンションアーム類はサビこそあるものの、状態は良さそうです。

ステアリングラック 点検。異常なし。

左フロントハブベアリングにガタが出ていました。右側のベアリングはまだガタはありませんでしたが、左右同時に新品に交換します。

こちらは新品のハブベアリング。

プーラーで古いベアリングを抜き取り、新品のベアリングを圧入。

新品のベアリングに交換すると気分的にも気持ちがいいものです。

トラニオンはラバーシールが傷んでいる状態だったため、分解・点検の上、スリーブ・ワッシャー・ラバーシールを新品に交換しました。

サスペンションアームの塗装前と塗装後の写真です。塗装前はメッキに錆が浮いている状態でした。塗装後は半艶のブラックで美しい仕上がりとなっています。見た目の上でも足回りが綺麗になると印象は全く異なりますね。

消耗品であるブッシュは新品に交換。SEVENは車重が軽く足回りへの負担が少ないこともあり、ブッシュがへたっていることに気が付かないまま乗り続けられている車両は少なくありません。硬化したりひび割れたブッシュを交換してやると本来のフィーリングを取り戻すことが出来ますので、やはり定期的に交換をしたいパーツです。

真新しい塗装に傷をつけない様、慎重にブッシュを圧入します。

エンジン積み込み・消耗品交換

点検・整備が終わったエンジンをいよいよ積み込みます。今回のメニューは・・・

  1. エンジンマウントブッシュ交換
  2. エキゾーストマニホールドガスケット交換
  3. ラジエターアッパーホース交換(シリコンホース)
  4. ラジエターロアホース交換(シリコンホース)
  5. ラジエターロアホース中間パイプ製作・交換

SEVENの消耗品の一つ、エンジンマウントブッシュ。エンジンブラケットとこの大きなゴムブッシュを介してエンジンはフレームにマウントされています。ひどいヒビ割れは見られなかったものの、いつ交換されたものか不明のため2個とも新品に交換しました。

新品のエンジンマウントはゴムの表面にしっとりした艶がありますね。このマウントはSEVEN160を含む新しいSEVENにも同じものが使われていますので、定期的に交換をしましょう。

エンジンの積み込み。

シャシーに乗せたら、ホースやエキマニを取り付けていきます。

上はもともと取り付けられていたラジエターホース。ゴムはすっかり硬化し、途中のパイプは真っ赤にサビた状態でした。ラジエターホースはアッパー・ロア共にシリコンホースに交換。ロアホース中間の接続パイプも新たに製作しました。

エキゾーストマニホールドガスケットは交換。

エキゾーストマニホールドを取り付け。複雑に曲がったエキマニを慎重にサイドパネルに通し、ヘッドに固定します。ここまでくればもう一息です。

キャブレター O/H

エンジンや足回りと並行して進められていたキャブレターオーバーホール。

  1. WEBER DCOE キャブレターオーバーホール
    ※ペーパーガスケット・Oリング・ニードルバルブ
  2. フィルター・リターンスプリング交換
  3. ミサブインシュレーター交換
  4. キャブレターマウントグロメット交換

車体から取り外したWEBER 40DCOE。

Weber 1機分のオーバーホールキット。ガスケットやOリング等の消耗品を一式交換します。

ミサブインシュレーターとマウントグロメットを交換。劣化してゴムがつぶれてくると二次エアを吸う原因にもなります。

シフトリンケージ

最終チェックを兼ねた試走をしていたところ、メカニックがシフトに若干の違和感を感じました。通常開ける機会は少ない箇所なのですが、念のためにセンタートンネルを外し、シフトレバー周りを分解します。

すると、シフトリンケージの樹脂パーツが経年劣化で傷んでおり、それがシフトフィールに影響を与えていたようです。

写真左側が今回の原因となっていたパーツです。経年劣化で脆くなり、本来の機能をはたすことが出来なくなっていました。右側が急遽手配した新しいパーツです。

パーツを組み込み、センタートンネルをもとに戻して完了。このまま進行すれば変速出来なくなる可能性もありましたので、納車前に発見・対処が出来て一安心です。

なお、今回ご紹介は省略させていただきましたが、アルミパネルのポリッシュ加工などのボディリフレッシュも行っております。見た目も中身もリフレッシュされ、最高の状態に仕上がりました。

CATERHAMの歴代のSEVENの中でも特別な1台として語られるBDRですが、全ての車両が本来の性能を維持出来ているわけではなく、調子を崩しかけた車両も少なくありません。

BDRを所有するならば、ぜひ本当パフォーマンスとフィーリングを味わっていただきたいと思います。